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古代インドにあって仏教を守護した大王として知られるアショーカ王。

仏典には、
「残忍アショーカ」から「法のアショーカ」へと変身を遂げる説話があります。

史実を反映している叙述もあり、その史料的価値は高いと言われています。




アショーカ王が王位に就いた時、大臣達は彼を軽んじていた。
王は大臣達に言った。
「汝等よ、花を付けた木々や実を付けた木々を伐採し、荊の木々を保護せよ。」
「王は一体どこに目を付けているのだ。
むしろ荊の木を伐採し、花を付けた木々や実を付けた木々を保護すべきであろうに。」
彼らは三度に亘って王の命令に背いた。
すると怒った王は剣を抜き、500人の大臣の首を刎ねた。
人々はこのような彼の残忍さを見て、「残忍王」「残忍アショーカ」という渾名を付けたのである。
ある時、筆頭大臣ラーダグプタが王に進言した。
「王よ、そのような非道なことを御自分でなさるのは相応しくございません。
王の代わりに囚人を殺す者どもを雇われますように。
その者どもが王に代わって死刑執行の仕事をするでしょう。」
やがて王は家臣達に「私の代わりに囚人達を殺す者を探してこい」と命じた。

さて、そう遠くない山の麓に村があったが、そこに織物師が住んでいて、
彼に息子が産まれ、ギリカと命名された。
少年は残忍だったので、彼には「残忍ギリカ」という名前が付けられた。
彼が悪事に夢中になっているところを王の家来が見つけると、彼らは彼に言った。
「お前はアショーカ王のために死刑執行の仕事をすることができるかね。」
「全てのこの世の人間を死刑にしてやるさ」と彼は言った。
こうして彼らは彼をアショーカ王に差し出した。
彼は王に「私のために家を建てて頂きたい」と言ったので、
王は入り口だけは魅力的で最高に美しい家を建てさせ、
それに「楽しき館」という名前が付けられると、彼は言った。
「王よ、ここに入った者は二度と出さないという我が願いを聞き入れよ。」
そこで王は「そうしよう」と言った。

さて、商主の息子サムドラは世尊の教えに従って出家した。
彼は地方を游行しつつ、パータリプトラに到着した。
彼は午前中に衣を身に着け、衣鉢を持つと、乞食しにパータリプトラに入った。
そして彼は何も知らずに「楽しき館」に入ってしまった。
そして入り口だけは楽しそうに見えるが、
内部は地獄の住処にも似た恐るべきものであるのを見ると、再び外へ出たくなった。
ギリカが彼を見つけて捕まえると、「お前にはここで死んでもらう!」と彼に言った。
こうして憂いに打ちひしがれ、涙で喉を詰まらせた比丘はギリカに言われた。
「一体どうしたのだ。幼子みたいに泣くとは?」
比丘は答えた。
「善友よ、決して我が身の破滅を憂うるにあらず。
我が身に生ぜし解脱の法に対する障礙を心底憂うるなり。
我は得難き人身と、楽を生ずる出家と、
釈迦族の獅子たる師をも得ながら、再びそれらを捨てねばならぬ。」
彼はギリカに言われた。
「私は王から特権を与えられている。じたばたするな。お前はもう逃げられぬ。」
すると比丘は悲愴な声で一ヶ月の猶予を懇願したが、七日間の猶予しか許されず、
彼は死の恐怖に心を痛め、「七日後には死ぬのだ」と心中穏やかではなかった。

さて七日目のこと、アショーカ王の後宮の女がある王子と恋をし、
彼を見つめて言葉を変わしているのを見つけると、見るが早いか、
王は激怒し、彼らを二人ともその牢獄に放り込んだ。
そこで二人は鉄の臼の中に入れられ、擂り粉木で潰されて骨だけが残った。
その後、比丘はその二人を見ると、震え上がって言った。
「ああ、大悲ある師にして偉大な牟尼はいみじくも言えり。
『肉体は泡沫の如く実体なく儚きものなり』と。
あの顔の美しさはいずこに行けるや。
身体の美しさはいずこに消えたるや。
ああ、厭わしきかな、愚者達が楽しむこの輪廻は! 
牢獄に留まれる我は、出離の手だてを得たり。
それにより、今日、我は存在という大海の彼岸に渡らん。 
一晩中、我は仏の教えに専心し、 
一切の束縛を断ち切って、最高の阿羅漢性を獲得せり。」

さてその夜が明け、残忍ギリカがその比丘に、
「比丘よ、夜が明けて太陽が昇った。お前を処刑する時だ」と言うと、比丘は言った。
「寿命長き者よ、私の最後の夜が明けて太陽が昇った。
最高なる恩寵の時だ。
お前の好きなようにするがよい。」
残忍ギリカが「一体何のことだ。その言葉を説明しろ」と言うと、比丘は言った。
「五蓋に覆われ、煩悩という盗人に傅かれし、恐ろしき痴の夜が我が心からも消え去れり。
そして智の太陽が昇り、我が心の空にて輝けり。
その光もて我はこの三界を如実に見る。
師の教えに従う我に最高なる恩寵の時来たれり。
寿命長き者よ、汝の欲するままにこの身を処置せよ。」
その後、残忍で恐ろしい心をし、来世を顧みず、怒りに満ちたギリカは、
水が一杯に入り、人間の血・髄・小便・大便が混じった大きな鍋に彼を投げ入れた。
そしてたっぷりの燃料を使って火を付けた。
多くの燃料を投入しているのに、熱くならなかった。
そこで再び火を付けようとしたが、それでも火が付かないので、
その鉄鍋の中を調べてみると、その比丘が蓮華の上で結跏趺坐しているのが見えた。
彼はそれを見て王に知らせた。
王が駆けつけ、数千の人々が集まってきた時、
その比丘は彼らを教化すべき時が来たと考えた。
鉄鍋の中で身体が水に濡れた比丘は、その瞬間に神通力を起こし、
見つめる人々の直中で、水面の白鳥の如く天空に舞い上がれり。
そして彼は様々な神変を現し始めた。
半身からは水が出て、半身からは火が出たり。
彼が空中で水を出し光り輝く様は、光り輝く薬草と水の流れとを持つ山の如し。
空中に舞い上がれる彼を見て、王は合掌し、
驚きの余り口をぽかんと開け、彼を見つめて言えり。
「我は己が好奇心から是非とも聞きたきことあり。
美しき方よ、貴方の姿は人に似たれども、神通力は人を超越せり。
自在者よ、よって我は合点が行かぬ。
心浄き人よ、貴方は一体何者なるや。
貴方のその神通力について我が理解できるよう、今、その意味を我に説け。
貴方の善・徳・威力を知れば、我は力の限り汝の弟子の如く振る舞わん。」
そこで比丘は「彼が教えを摂受し、世尊の遺骨を広め、
大勢の人々の利益のために邁進するに違いない」と考えて、
自分の徳を明らかにしつつ、彼に言った。
「王よ、我は、大悲を有し、一切の漏という束縛を断ち切られたる、
論者達の中の最高者たる仏の子なり。
我は法に従い、一切の存在に執せず。
我は自己を調御せる方に調御され、寂静に至れる人達の最高者に寂静へと導かれたり。
解脱者によりて我は輪廻の大いなる恐怖と有の束縛より解脱せしめられたり。
そしてまた王よ、あなたは世尊に、
『私が般涅槃して百年後、都城パータリプトラにアショーカと呼ばれる王が現れる。
彼は世界の四分の一を支配する転輪王となり、
私の遺骨を広め、八万四千の塔を建立する法王となろう』と予言された。
なのに王はこんな地獄さながらの場所を作らせてはそこで何千もの人違を殺させている。
王よ、あなたは一切有情に安心をお与えになられるように。
そして世尊の望みを叶えられるように。」
そして比丘は言った。
「それゆえ、王よ、貴方は優しき有情達に安心を与えよ。
導師の望みを叶え、法を具させる塔を広めよかし。」
「十力者の子よ、この悪行を許せ。
そして今、我は貴方にかく宣言す。
我はかの聖仙たる仏に、聖者に知らしめた法に、そして最高の僧伽に帰依す。
さらにまた、今、我は仏を尊重し、仏に傾倒せる浄信ゆえに、かくの如き努力をす。
白鳥・太陽・法螺貝・月・鶴に似た勝者の塔で大地を荘厳せん。」
やがて、その比丘はその同じ神通力でそこを脱出した。


「ディヴィヤ・アヴァダーナ」




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