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2009.04.14 一羽の蝶
あるとき、一羽の蝶が花の上に休んでいました。
蝶は陽気で、羽のようにかろやかでした。
そのとき彼は、胸もはり裂けんばかりに泣いている芋虫に出会いました。
芋虫の泣くのを見て蝶の陽気な心は痛みました。

蝶は言いました。
「どうしたの?なにか助けてあげられることがある?」

「兄さんが死んじゃったんだ」と、芋虫は泣きじゃくりました。
「兄さんは前から具合がわるかったんだ。
今日見たら、悲しいことに、兄さんは死んで、脱けがらになってたんだ。」

「かわいそうな芋虫くん。泣くのはおよし。
君の病気だった兄さんは、死んではいないんだよ。
兄さんの身体はうんと強くなって、
みみずみたいにはいまわるのをやめて、空を飛んでいるんだ。
そして今は、日だまりの中で踊りながら、甘い花の蜜を吸って暮らしているんだよ。」

「あっちへ行け。嘘つきの悪党め。
おまえの住みかの風のところへ帰っちまえ。
おまえなんかいなくたって、ちっとも淋しくないんだ。
おまえのような嘘つきの顔なんか見たくない。
ぼくはそんなおとぎ話を信じるような馬鹿なナメクジやカタツムリとは違うんだ。」

「ぼくの言ったことは本当さ。きみは信じないんだね。
よくお聞きよ。そしてぼくをよく見てごらん。
ぼくがきみのその兄貴じゃないか。
元気で、ピンピンして、自由自在さ。
今にきみも、ぼくと一緒に、蝶の仲間に入って、空を飛ぶようになるんだよ。」

「ああ!」と、悲しんでいる芋虫は叫びました。
「ぼくには何でもはっきり見えるんだ。
お前は蜜を吸ってるお化けじゃないか。
きれいな羽なんかひらひらさせちゃって、
庭で勝手なことばかり、言ってやがる。
もう聞きたかないさ。」

蝶は、言い争うのをやめました。
「もう何も言わないよ」と言いました。
彼は美しい羽をひろげて、空へ昇り飛び去って行きました。
羽をひらひらさせた彼の姿が遠くなっても、
芋虫は、泣いていました。

G・V・オーエン




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