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2008.05.24 因果応報
輪廻転生は、仏教教義において中核をなす重要な概念です。
にもかかわらず、これを否定する仏教徒は数多くいます。

例えば、インドの新仏教徒運動で知られるアンベードカル博士は、
輪廻転生は、カースト制度を温存する原因になっているとして、
仏教からこれを意図的に排除しました。

日本においても、
輪廻転生の教義は、差別を助長するものであるとして、
これを排撃しようとする動きもあります。

アンベードカル博士は、その著書「ブッダとそのダンマ」でこのように言っています。

「前世カルマ説は、全くもってバラモン教義そのものである。
現世に影響をおよぼす前世のカルマは、バラモンの霊魂説と全く合致するが、
ブッダの非霊魂説とは全然一致しない。
これは、仏教をヒンズー教と同じものにしようと考えた何者かか、
仏教とはいかなるものかをまるで知らない者によって、持ちこまれたものである。」

「前世カルマが来世を支配するというヒンズー教義は、正に邪悪なものである。
このような教義を作り上げた目的は何であったのか。
考えられる唯一の目的は、国あるいは社会が、
貧しく身分の低い人びとの悲惨な状態に対し責任逃れするためである。」

このような主張は、日本でもよく聞かれるものです。

仏教者は、こうした意見に対してきちんと反論していくことが今後の課題です。

因果応報は、宇宙の法則であるという事実は曲げられません。
原因があれば必ず結果があります。
私達人間においても、今世のみで、その法則が完結するということはありません。

輪廻転生をかたよってとらえると運命論的になり、努力の放棄や諦めの理論にもなります。

しかし、本来の輪廻転生は、
自分の人生に自らが責任を持ち、末来を切り開いていくためのものです。

生れによって幸・不幸が決るのではなく、行為によって幸福になれる、
という視点を忘れてはいけません。

私達は、何度も、
地上のいろいろな環境下に生れては、魂修行を繰り返している存在です。
この永遠のいのちを与えられているという事実は、
大いなる神の恩寵以外のなにものでもありません。


新進の仏教学者、宮元啓一氏は、大変説得力のある主張をされています。

インドで生まれた輪廻説は、仏教を通じてわが国でも一応は支持されてきた。
しかし、明治維新と併行して展開された廃仏毀釈運動や迷信打破運動のなかで、
輪廻説は急速に旗色を悪くしていった。
科学(サイエンス)は、経験から優れた仮説的な法則を導き出す学問であるから、
死んだらどうなるかという、経験を超えた領域の問題について、発言することがない。
したがって、科学的な死生観などあるはずもないのに、多くの人々は、
輪廻説は非科学的な迷信だという。科学的か否かという基準で死生観を論ずるなど、
これこそまさに迷信にほかならない。しかしそれにしても、輪廻説は人気がなく、
そのような迷信を仏教の開祖であるゴータマ・ブッダが信じたはずがない、
いや、輪廻説を否定したところにこそ仏教の革新的な独創性があったのだ、
と主張する仏教学者や僧侶や熱心な仏教信者が多いのには、
いささか驚かされるところもある。これでは僧侶は仕事がしにくいであろうに。
また、輪廻の六道からの一種の抜け道ともいうべき極楽往生も、極楽の存在を、
同じような理由で信じない人が多い昨今、とんと人気がなく、
浄土教系宗門の僧侶たちにとって悩みの種である。 

倫理は、人に、未来を視野に置いて、為すべきことは何かを考えさせる。 
因果応報というと、それぞれの人の今の境涯を、過去の因によって、
いわゆる宿命論的に決定づけ、支配者、社会的強者による弱者への差別を、
固定化することに用いられることが、わが国の歴史にもあった。
しかし、倫理への動機づけであるはずの因果論は、
過去の行いが現在を規定するという場面で用いられるのはやはり誤りで、
現在のわが実存が、自由に未来をみずからの力によって切り開く、
という文脈で用いられるのが本来である。
倫理の視野は常に未来にあるから、したがって、
倫理はわれわれの短いこの世での人生だけでは完結しない。
倫理は、生を超え、死の向こう側をも志向し、ゆえに死生観に深く関わる。
世界で数ある死生観のうち、輪廻説は、倫理的、
論理的にきわめて多様で緻密に出来ている。
一部の仏教学者や僧侶たちが主張したがるように、
現代の仏教においてパラダイムの転換が必要だというならば、
それは、輪廻説という枠を否定することではなく、
輪廻説の枠の内をいかに巧みに解釈改変をするかに腐心することである。
知性のある人ならば、汚れた盥の水といっしょに赤子を流すような愚を犯してはならない。





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