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ドイツ生まれの詩人で、社会学者としてアメリカの大学で教鞭をとっていた、
ウィリアム・ヘルマンス博士は、神秘主義者でもあり、
ユダヤ教、キリスト教、ヴェーダ、仏教、イスラム教などを包含した、
宇宙的宗教を打ち立てたいという意思を持っていました。

彼の著書には、
アインシュタイン博士との対話の様子が描かれています。

極めて、興味深い内容です。


アインシュタインは無遠慮にほほえんだ。
「どういう哲学体系を理解するかは重要じゃないさ。
人間は生命の神秘を解きあかす力をもつ心を授かっている、
ということを理解すべきなんだ。
こうした知識があれば、みなが思索者になれるはずだ。
人間が宇宙的存在としての自らの尊厳を肉体的自我以上に自覚すれば、
この世界は平和になることだろう。」
あわてて抜き書きのメモを引っぱり出しながら、私は言った。
「そのために、ここへ来たんですよ。
肉体も含め物質とは五感がつくったものにすぎないということを証明するために。
バークリーはこのように言っています。
  天上の聖歌隊席も地上の家具も、ある意味でこの世を形成する物すべては、
  心がなければ実在しないのである。
次はライプニッツの言葉です。
  私は光や色や熱のようなものだけでなく、動き、かたち、
  ひろがりなども知覚することができる。
  しかし、これらのすべては、心が構成したものにすぎないのだ。
どう思われますか、アインシュタイン先生?」
彼は、ちょっと考え込んでいる様子だった。それから、かるく咳払いをした。
私はたたみかけるように言った。
「これらの思想家は同じことを、
つまり物質が実在しないことを証明しているのではないでしょうか?」
「ちがう!」 アインシュタインは反駁した。
「それは君の勝手な解釈だよ。」と彼は疑わしそうな目つきをした。
「かりに彼らがそう言ったとしても、私までそう言わねばならん理由はないだろう。」
「そうおっしゃいませんでしたか。たとえば、
あなたは電気も磁気も実在ではないかもしれない、と言いましたよ。」
「心で思っている電磁気の概念が、
真実と異なるかもしれないという意味で言ったのではないかな。
知識が進むにつれ、そうした概念は変わるからね。」
彼は何度か深く息をして、ちょっとの間、困惑したように見えた。
それから窓の外に目をやりながら言った。
「真実と実在のちがいを知るのは大切だよ。電気と磁気は、まさしく実在している。
実在は理論によってではなく、経験し、触れることによって確認される。
だからといって重力の法則が実在するか確かめるために、
エンパイアステートビルから飛び降りたり、電気の実在を確かめるために、
裸の電線にさわったりしなけりゃならんという意味ではないがね。」
私は哲学的情熱を押さえられなくなった。
ノートをたたみ、両手でテーブルの端をつかんで、
アインシュタインの方へ身を乗り出した。
「すべての物は、このテーブルのように固かったり、
クラブアップルのように酸っぱかったり、戸外の太陽のように暑かったり、
氷のように冷たかったりしますが、それらは心の中だけに存在しているのです。
ですから、エネルギーとか星とか原子とか呼んでいるものは実在ではなくて、
意識的な心の解釈にほかならず、
人間の知覚が形成した伝統的シンボルだということを認めるべきなのです。」
アインシュタインが椅子をうしろに引いたので、私はあわてて座った。
彼はにっこりした。「君は太陽を暑いと言ったね。それから、このテーブルは固いとね?」 
彼は、ていねいにテーブルを数回たたいた。
「で、私は年寄りで君は若いか? もちろん、われわれだけがそう言うのじゃない。
理性をもち、健全な五感が備わる人なら、みな同じことを言うはずだ。
同様に、バラは赤くて芳香がして、ヴエルヴェットのような手触りがすると誰もが言う。
言い換えれば、感覚によって理解される客観的実在というものがあるということだ。
そしてその背後には、科学者が発見の栄誉を与えられる自然の法則がある。
自然は気まぐれではなく、数学的法則に従って運行している。
私が口を酸っぱくして言うように、神は世界を相手にサイコロ遊びなどなさらないのだ。」
上機嫌で私の目を見据えながらアインシュタインは続けた。
「でっかいスーツケースを運ぶとき、誰かこいつをもってくれないかなと思うだろう、え?」
「もちろんですとも!」アインシュタインはくすくす笑った。
「当然だよね!君も私も、その物体が実在するということはわかっている。
しかし、君がスーツケースを他人にもってもらおうとするのに対し、
私は自分で運ぶというところがちがうんだ。」
「先生は、聖書をすでに無用の書物だとお考えになりますか?」
「奇跡に関してかね?」と彼は聞き返した。
私はうなずき、アインシュタインは皮肉っぽい笑みを浮かべて言った。
「君は信じているようだが?」
「もちろんです。」私はこの挑戦を受けて答えた。
「私は物質の法則の停止を、奇跡的というより神性的と呼びたいと思います。」
「神は、ご自分が創造したものを否定するのに、
超自然的な力を使うようなことはなさらないさ。」とアインシュタインは言い返した。
「自然の力について云々できるのは、
物質世界を受け入れた場合のみに限られます。」と私は言った。
「精神世界だけが存在しているのです。」
アインシュタインが面白がっている様子なので、かまを掛けてみることにした。
「もし神がこの物質世界をつくったのなら、
人類のすべての災厄や悲哀に対して責任をとるべきではありませんか?」
「そのとおりだ。」とアインシュタインは真剣に答えた。
「人間が自由意志を与えられていなかったとしたらね。
人間の行動のすべては、自分か誰かの意志の作用だ。
もし、多数の人がナチスの意志に従わなかったなら、
強制収容所などなかったはずなのだ。君も私も国を去る決心をして、ここに来た。
それはヒトラーの実在を感じていたからだ。」
彼は白髪を耳の上でより合わせて笑い、それから驚いたことに、
テーブル越しに身を乗り出してきたかと思うと、私の顔をぴしゃりと打った。
「感じたかい?これでも、物質が実在しないと言うのかね?」
「感覚の上では物質は実在します。」と私は顔を押さえながら言った。
「でも、それはあてにはなりません。
もしガリレオやコペルニクスが、見たとおりのことを受け入れたとしたら、
地球や惑星の運動に関する発見はなかったでしょう。」
アインシュタインは、かがみ込むと、私に向き合った。私は本能的にたじろいだ。
「しかし、彼らの心は五感を離れたことはなかった。」と言って彼は指を立てた。
「いいかい。科学的事実として受け入れられているのは、
われわれが知覚し思考するものの、ほんの一部にすぎないんだ。
われわれの作業のかなりの部分は無駄になるわけだが、だからといって、
われわれの感覚が信用できないという意味じゃない。
感覚はおそらく退化しているだろうし、開発する余地もあるだろう。
しかし感覚は、われわれが聞いたり、見たり、
感じたりするものに対応した現実なのであって、現実世界に属しているものだ。」
「しかし、あなたは、物質が電磁場に溶け込みうるとおっしゃいましたが、
原子の存在に疑間をもっていたのではないですか?」アインシュタインは動揺した。
「物質の存在を否定したことなど一度もないよ!
重たいスーツケースを持ったら、君だってそのはずだ。」
「しかし、あなたは世界を精神現象に還元してしまわなかったでしょうか。」と私は迫った。
「電磁場は心の産物などではない。」彼は落ちつきをなくした。
「創造の始まりは精神的なのだが、
それは被造物すべてが精神的だという意味ではない。
君にはどう説明したらいいのかな?」彼は髪の毛を引っ張った。
よい言葉が見つからないか、私を説得できないのでイライラしていたのだろうか。
「世界は不思議なものだということを認めようじゃないか。
自然は、完全に物質的でも、完全に精神的でもない。
人間も血と肉だけの存在じゃない。
そうでなければ宗教など、あるわけがないじゃないか。
原因の背後には、またべつの原因がある。
すべての原因の始まりも終わりも、まだ発見されていないんだ。
しかし、これだけは憶えておかなくちゃいけない。
それは原因なくして結果はなく、法則なき創造はないということだ。」


「アインシュタイン神を語る」




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